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兼業する労働者の労災保険給付について

【NHK】労災保険 副業・兼業で過労の場合の仕組み 厚労省が検討

複数の使用者と雇用契約を締結し、労働している労働者が労働災害に被災した場合の労災保険給付について、厚生労働省が見直しを検討し始めたようです。

労災保険給付には、治療費のような医療サービスを現物で支給するものと、被災事業所から受け取った賃金に基づき休業、後遺障害、死亡の際に給付される現金給付の二種類があります。今回は、後者の現金給付について見直しをすると報道されています。そして見直す理由についてもNHKの報道で紹介されています。

現金給付の額は、過去3か月間の平均賃金を基に決まるのですが、その際の賃金とは、被災事業場の使用者から受け取った賃金だけです。複数の使用者から賃金を受け取っていても、被災事業場以外の使用者からの賃金は給付額に反映されません。複数事業場で労働する労働者のなかには、一つの事業場だけの賃金では十分な生活ができない方がいるでしょう。被災労働者にとって、現行の制度では補償が不十分になってしまいます。
(さらに…)

労働保険適用事業場検索サイト

厚生労働省が、労働保険適用事業所を検索できるサイトの運用を始めました。

【厚生労働省Webサイト】労働保険適用事業所検索

まず調べたい事業所が所在する都道府県を選択し、事業所名・法人番号・所在地のいずれか一つ以上の情報を入力して検索することができます。検索ワードは完全に一致していなくても、一部分が一致していれば、その条件に合った結果が出力されます。

例えば私の事務所の場合、「久保事務所」「千代田区岩本町3-3」であっても、検索することができました。

就職活動をしている方、新しい取引先を探している方、あるいは企業買収を考えている方が、相手の労働保険加入状況を知ることができるため、便利なサービスなのかもしれません。

膀胱がんの労災認定について

福井県の工場で膀胱がんを発症した7名が労災保険の請求をした件で、厚生労働省が医学的知見を取りまとめ、それに基づいた請求事案の処理を指示しました。

膀胱がんとオルト-トルイジンのばく露に関する医学的知見を公表します(厚生労働省Webサイト)

それを受けた形で福井の7名については、すでに支給決定が出ているようです。

ぼうこうがん、7人労災認定=福井の工場で化学物質暴露-厚労省(JILPT/時事通信)

厚生労働省が作成した報告書の概要(PDFファイル)では、先行研究のレビューにより、膀胱がんの発症リスクを確認し、そのうえで結論を出して、今後の対応を決定しました。そこで今回は、報告書の要点をまとめました。

1 先行研究の知見
(ア)暴露期間
10年以上の暴露期間があると、有意に発症リスクが高まる。
5年以上10年未満では、有意差はないが発症に関与していると示唆されている。
5年未満では、発症リスクの増加が示唆されている。

したがって、統計上有意なのは、10年以上の暴露期間ということになります。

(イ)潜伏期間
暴露開始から発症までの期間が20年以上で有意に増加するという報告が多い。
10年以上20年未満でも発症したという報告がある。

したがって、統計上有意なのは、20年以上の潜伏期間ということになります。

2 厚生労働省が出した結論
暴露業務に10年以上従事し、潜伏期間が10年以上であれば、業務が相対的に有力な原因となって発症した可能性が高い。

上記以外の場合、作業内容、暴露状況、発症時の年齢、既往症の有無等を勘案して、業務と発症の関連を検討する。

3 今後の対応
福井の事案については、早急に処理するよう指示する。
今後の労災請求事案については、今回の検討会が引き続き業務と膀胱がんの関連を検討する。
オルトートルイジンを取り扱う事業場に対して、労災請求手続きに関して周知する。
オルトートルイジンを特定化学物質に指定する。
経皮吸収によって健康被害の懸念がある化学物質については、保護具の着用と、身体に付着した場合の洗浄を義務付ける。
今後、行政指導を行っていく

なお、オルトートルイジンを使用している事業場は、先の時事通信の報道によると、全国で59か所あるそうです。

労災保険特別加入制度/「海外派遣者」と「海外出張者」の違い

中国現地法人の総経理として派遣されていた方の死亡について、労災保険給付の不支給決定の取消が認められなかった事例が判例雑誌に紹介されていました。

中央労働基準監督署長事件(H27.8.28 東京地裁判決、労働経済判例速報67巻5号 通算2265号 pp3-16)

労災保険は本来、日本国内に所在する事業に関し、業務上又は通勤による負傷、疾病、障害、死亡等に対して保険給付を行う制度です。
従って、日本国内で事業を行う事業主が、海外において行われる事業に従事させるために労働者を派遣する場合、その派遣された労働者は、本来的には派遣先国の諸制度によって保護されるべきところですが、必ずしも当該国で日本の労災保険のような制度が整備されているとは限りません。
そこで、労災保険制度では、海外の事業に従事するために派遣される労働者について、事業主が申請し、国が承認することで特別に労災保険に加入を認めるという、特別加入制度を設けています。

もっとも、日本国内の事業に従事する者が、海外出張中に事故に遭った場合は、特別加入制度の適用をするのではなく、本来の労災保険制度によって救済されることとなっています。

今回の事例では、死亡した方に関して特別加入手続きをしていませんでした。国内事業に従事する「海外出張者」であれば、手続をしていなくても保険給付されますが、海外の事業に従事する「海外派遣者」であれば、特別加入が国によって承認されていないと、労災保険から保険給付を受けることができません。死亡された方が、「海外出張者」か「海外派遣者」かのいずれに該当するかが争われたのが今回の事例です。

裁判所は、その判断枠組みとして、次のように判示しました。

期間の長短や海外での就労に当たって事業主との間で勤務関係がどのように処理されたかによるのではなく、当該労働者の従事する労働の内容やこれについての指揮命令関係等当該労働者の国外での勤務実態を踏まえ、いかなる労働関係にあるかによって総合的に判断すべきである。(p14)

そして、今回の事例について
1.現地法人が、場所的に本社から独立して存在していること
2.現地法人の法的地位ないし権能、活動の実態が、独立した事業場として評価するに値すること
3.現地法人での、死亡した者の地位、業務内容が、現地法人の業務に従事していたといえること
の主に3つを検討しています。

1については、現地法人が中国に所在するため、場所的に独立していることは明白です。2については現地での活動拠点としての実態を有しており、決裁権限に内部的な制約はあったようですが、これは国内の独立した事業所でも同様であるので、独立性を否定しないと判断しています。3についても、死亡された方は、中国国内の営業活動や物流管理業務に従事しており、本社が勤怠管理し、賃金を支払っていた事情はあるものの、それをもって現地法人の業務に従事していたことを否定する事情とはならないとしました。

労働者を海外へ派遣する、長期出張させるといった場合、特別加入申請の必要性の判断について、今回の事例が参考になると思います。近年、中小企業も積極的に海外へ進出していますが、特別加入制度の手続きに遺漏がないよう、ご注意頂く必要があるでしょう。

なお、海外派遣者に係る特別加入については、海外の事業に労働者として従事する場合だけでなく、中小規模の事業であれば「役員」として従事する場合も申請が可能です。
詳しくは、厚生労働省のパンフレットをご覧ください。

労災保険の「治癒」と「再発」について

厚生労働省が、労災保険法における治癒の概念を説明したリーフレットを作成しました。
労災医療に従事する医師向けのパンフレットです。

労災保険における傷病が「治ったとき」とは・・・

労災保険では、
1.治療そのもの
2.治療中に休業が必要な場合の賃金補償
3.治癒したあとに障害が残った場合の金銭補償

があり、「治癒」したか否かによって、保険給付の内容が異なります(なお、労災保険の給付には、これ以外にも死亡や介護を理由とした給付もあります)。
従って、「治癒」とは何か?ということが重要になります。

労災保険法でいうところの「治癒」とは、これ以上医療行為を行っても、症状の回復や改善が見込めない状態(症状固定状態)のことを言います。リーフレットでは、「医療行為」の範囲や「症状固定」の考え方について、詳しい説明がなされていますので、一度目を通してみるとよいと思います。

また、再発についてもリーフレットで説明されています。一旦固定した症状が明らかに悪化し、医療行為によって症状の回復や改善が見込める状態のことを言います。
但し、その悪化した症状は、労災保険の給付である以上、業務や通勤との相当因果関係があることが必要です。
「再発」と認められれば、「治癒」している状態とは認められませんから、もう一度労災保険で治療を受けることができるようになります。

「過労死等の防止のための対策に関する大綱」閣議決定について

「過労死等の防止のための対策に関する大綱」が閣議決定されました。厚労省のWebサイトにその内容が公表されています。

大綱で掲げた対策の柱は、次の4つのようです。

1.調査研究
2.啓発
3.相談体制の整備
4.民間団体の活動に対する支援

調査研究については、労働時間だけでなく、深夜労働や出張の多い勤務といった労働の態様や、企業経営の状況、商取引慣行、労働者の職場以外のライフスタイルにまで関心を広げるようです。
また、民間企業の労働者だけでなく、公務員、法人役員、自営業者も対象とする一方、特定の業種(自動車運転従事者、教職員、IT産業、外食産業、医療等)や年齢層についてより詳しく調査をするとしています。

啓発については、国民一般に対する啓発、教育活動を通じた啓発、職場関係者に対する啓発を念頭に実施するようです。特に職場を管理する立場にある管理職に対する啓発と、若年労働者に対して実施する労働条件に関する理解を深めるための啓発が重要としています。

そして、国が重点的に実施する施策のうち、職場関係者に対する啓発の内容として、
「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」
36協定に関し、労働者への周知の徹底等
脳血管・心疾患に係る労災認定基準
平成32年までに週労働時間60時間以上の雇用者を5%以下にする国の目標
を挙げています。

労働時間管理に関して、これまで以上に適切な対応が求められている内容と言えるでしょう。

労働保険料等再確定申告について

さきほどtwitterでつぶやいた内容なのですが、自分への備忘録としてブログにも残しておきます。

--以下twitterのつぶやきの転載--

労働保険料等再確定申告っていう法律で定められていない手続きがあるのを、今日まで知りませんでした。労働局によって扱いが違うようなのですが、東京労働局の場合は、これの適用がありうるようです。

法律上の制度をそのまま適用すると、確定労働保険料については、申告期限である7月10日を過ぎた後に労働保険料の再計算が必要な事由が生じた場合、国が職権で行う認定決定がなされ、追徴金が課せられます。

認定決定は国の職権で行われるのですが、自主的に申告内容に不備があったことを申し出た場合は、本来申告期限内でしか認められない、「再申告」の制度を例外的に認め、事業主に労働保険料の際申告を認めることがあるのだそうです。この場合、認定決定であれば課される追徴金は払わなくてよいとのこと。

労働局としては、自主的な申告を極力進めたいという考えなのかなあと思います。また、各都道府県局で扱いが違うようなので、事前の確認は必要かと思いますが、労働保険の申告内容に不備があった場合は、まずは所轄の労基署に相談されるのもよいのかなと思った次第です。

都道府県局によっては、問答無用で認定決定ということもあるようなので、、、その点はご承知置き下さい。

労働保険料の申告納付って、税金ほどには浸透していないので、徴収担当部門は苦労しているのかもなあ。

あ、私が労働保険料の申告を単純にミスったという話じゃないので、その点は誤解してほしくないです。。。

ちなみに、認定決定された際の追徴金は労働保険料の10%です。

【労災保険】労働者災害補償保険の障害等級見直しについて

平成23年2月より、労災保険の障害等級見直しが行われることとなりました。

 
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000010gs3.html
 
見直しが行われるのは、外貌に傷痕が残った場合の障害等級についてであり、その内容は、
 
1.従前は男女で異なる扱い(女性の方が等級が高く、補償が厚い)だったものを、条件の良い方に引き上げることで、同じ扱いに改める
 
2.従前は2段階しかなかった等級区分について、その中間にあたる等級区分を追加することによって、3段階の等級区分で認定する
 
の2点です。
 
 今回の見直しは、平成22年5月27日の京都地裁判決を受けたものです。
 同判決では、男女間に差を設けることは憲法判断の対象となるとした上で、障害等級の策定には「厚生労働大臣の比較的広範な裁量権」を前提に、その差別的取扱いの「合理的な理由」が求められ、「その差別が策定理由との関連で著しく不合理なもの」でなく、厚生労働大臣に与えられた「合理的な裁量判断の限界」を超えていない場合には合憲であるとしました。
 そして、結論として、策定理由については「根拠がないとはいえない」としつつも、本件全証拠や全趣旨を省みても、上記の「大きな差をいささかでも合理的に説明できる根拠」は見当たらず、上記策定理由との関連で著しく不合理と判断しました。そして、国は控訴せず判決は確定しました。
 
 この判決を受けて、厚生労働省の専門検討会は、障害等級のあり方について検討をした結果、近年の雇用社会における男女平等の進展などを勘案した結果、現在の状況で男女に差を設けるべき、やむを得ない理由はないとして、障害等級の見直しを決め、今般その内容が明らかになったのです。
 
 地裁判決を受け入れ、その後の検討もさほど時間がかかっていない点を見ると、障害等級の見直し自体は、厚生労働省内においても受け入れ難いものではなかったのかもしれません。いずれにせよ、今回の判断を素直に歓迎したいと思います。