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兼業する労働者の労災保険給付について

【NHK】労災保険 副業・兼業で過労の場合の仕組み 厚労省が検討

複数の使用者と雇用契約を締結し、労働している労働者が労働災害に被災した場合の労災保険給付について、厚生労働省が見直しを検討し始めたようです。

労災保険給付には、治療費のような医療サービスを現物で支給するものと、被災事業所から受け取った賃金に基づき休業、後遺障害、死亡の際に給付される現金給付の二種類があります。今回は、後者の現金給付について見直しをすると報道されています。そして見直す理由についてもNHKの報道で紹介されています。

現金給付の額は、過去3か月間の平均賃金を基に決まるのですが、その際の賃金とは、被災事業場の使用者から受け取った賃金だけです。複数の使用者から賃金を受け取っていても、被災事業場以外の使用者からの賃金は給付額に反映されません。複数事業場で労働する労働者のなかには、一つの事業場だけの賃金では十分な生活ができない方がいるでしょう。被災労働者にとって、現行の制度では補償が不十分になってしまいます。
(さらに…)

短時間労働者の厚生年金保険・健康保険の適用拡大について

社会保険新報に制度の概要が紹介されていました。

日本年金機構からのお知らせ/短時間労働者の厚生年金保険・健康保険の適用拡大の概要

適用拡大の対象となるのは、(1)特定事業所に勤務する、(2)短時間労働者です。
(1)・(2)をそれぞれ説明します。

1 特定適用事業所
1.同一の事業主の適用事業所において
2.厚生年金被保険者の被保険者数が常時500人を超える
この2つを満たす事業所のことです。

同一の事業主とは、民間企業においては「法人番号」が同じ適用事業所を刺し、常時500人を超えるとは、1年間のうち6ヵ月について「厚生年金保険」の被保険者数の合計が500人を超えることを指します。

2 短時間労働者
所定労働時間および(20160810修正)または所定労働日数が常用労働者(=正規従業員と同義)の4分の3以上で、次の1から4を全て満たす者のことを指します。

1.週所定労働時間が20時間以上であること(雇用保険と同様の条件)
2.賃金の月額が8.8万円(年額106万円)以上であること
3.雇用期間が1年以上見込まれること
4.学生(修業年限が1年以上である、高校生、大学生、専門学校生、各種学校の生徒)でないこと

1について、所定労働時間が週単位以外で定められている場合は、週単位に換算することになります。つまり、月単位であれば所定労働時間×12÷52、年単位であれば所定労働時間÷52を計算して、20時間以上であるか否かを判定します。また、1週間の所定労働時間が短期的かつ周期的に変動する場合は、平均を算出し20時間以上か否かを判定します。

2については、ここでいう判定の対象となる賃金は標準報酬を決定する際の報酬とは範囲が異なります。すなわち、割増賃金、通勤手当、家族手当等は除外され、また賞与も除外されます。

3において、1年以上の雇用期間が見込まれるとは
(ア)期間の定めがなく雇用される場合
(イ)雇用期間が1年以上である場
(ウ)雇用期間が1年未満であるが、雇用契約書に契約が更新される旨が明示されている場合
といったケースが例に挙げられています。

最後に4については、雇用保険の学生を対象としない基準と同様とされているようです。但し、一定の要件を満たす場合は被保険者となる場合があるようです。

短時間労働者の要件である、1から4のそれぞれについて、まだ不明確な部分があるようです。引き続き情報収集し、詳細が判明次第、追記したいと思います。

労災保険特別加入制度/「海外派遣者」と「海外出張者」の違い

中国現地法人の総経理として派遣されていた方の死亡について、労災保険給付の不支給決定の取消が認められなかった事例が判例雑誌に紹介されていました。

中央労働基準監督署長事件(H27.8.28 東京地裁判決、労働経済判例速報67巻5号 通算2265号 pp3-16)

労災保険は本来、日本国内に所在する事業に関し、業務上又は通勤による負傷、疾病、障害、死亡等に対して保険給付を行う制度です。
従って、日本国内で事業を行う事業主が、海外において行われる事業に従事させるために労働者を派遣する場合、その派遣された労働者は、本来的には派遣先国の諸制度によって保護されるべきところですが、必ずしも当該国で日本の労災保険のような制度が整備されているとは限りません。
そこで、労災保険制度では、海外の事業に従事するために派遣される労働者について、事業主が申請し、国が承認することで特別に労災保険に加入を認めるという、特別加入制度を設けています。

もっとも、日本国内の事業に従事する者が、海外出張中に事故に遭った場合は、特別加入制度の適用をするのではなく、本来の労災保険制度によって救済されることとなっています。

今回の事例では、死亡した方に関して特別加入手続きをしていませんでした。国内事業に従事する「海外出張者」であれば、手続をしていなくても保険給付されますが、海外の事業に従事する「海外派遣者」であれば、特別加入が国によって承認されていないと、労災保険から保険給付を受けることができません。死亡された方が、「海外出張者」か「海外派遣者」かのいずれに該当するかが争われたのが今回の事例です。

裁判所は、その判断枠組みとして、次のように判示しました。

期間の長短や海外での就労に当たって事業主との間で勤務関係がどのように処理されたかによるのではなく、当該労働者の従事する労働の内容やこれについての指揮命令関係等当該労働者の国外での勤務実態を踏まえ、いかなる労働関係にあるかによって総合的に判断すべきである。(p14)

そして、今回の事例について
1.現地法人が、場所的に本社から独立して存在していること
2.現地法人の法的地位ないし権能、活動の実態が、独立した事業場として評価するに値すること
3.現地法人での、死亡した者の地位、業務内容が、現地法人の業務に従事していたといえること
の主に3つを検討しています。

1については、現地法人が中国に所在するため、場所的に独立していることは明白です。2については現地での活動拠点としての実態を有しており、決裁権限に内部的な制約はあったようですが、これは国内の独立した事業所でも同様であるので、独立性を否定しないと判断しています。3についても、死亡された方は、中国国内の営業活動や物流管理業務に従事しており、本社が勤怠管理し、賃金を支払っていた事情はあるものの、それをもって現地法人の業務に従事していたことを否定する事情とはならないとしました。

労働者を海外へ派遣する、長期出張させるといった場合、特別加入申請の必要性の判断について、今回の事例が参考になると思います。近年、中小企業も積極的に海外へ進出していますが、特別加入制度の手続きに遺漏がないよう、ご注意頂く必要があるでしょう。

なお、海外派遣者に係る特別加入については、海外の事業に労働者として従事する場合だけでなく、中小規模の事業であれば「役員」として従事する場合も申請が可能です。
詳しくは、厚生労働省のパンフレットをご覧ください。

労働保険料等再確定申告について

さきほどtwitterでつぶやいた内容なのですが、自分への備忘録としてブログにも残しておきます。

--以下twitterのつぶやきの転載--

労働保険料等再確定申告っていう法律で定められていない手続きがあるのを、今日まで知りませんでした。労働局によって扱いが違うようなのですが、東京労働局の場合は、これの適用がありうるようです。

法律上の制度をそのまま適用すると、確定労働保険料については、申告期限である7月10日を過ぎた後に労働保険料の再計算が必要な事由が生じた場合、国が職権で行う認定決定がなされ、追徴金が課せられます。

認定決定は国の職権で行われるのですが、自主的に申告内容に不備があったことを申し出た場合は、本来申告期限内でしか認められない、「再申告」の制度を例外的に認め、事業主に労働保険料の際申告を認めることがあるのだそうです。この場合、認定決定であれば課される追徴金は払わなくてよいとのこと。

労働局としては、自主的な申告を極力進めたいという考えなのかなあと思います。また、各都道府県局で扱いが違うようなので、事前の確認は必要かと思いますが、労働保険の申告内容に不備があった場合は、まずは所轄の労基署に相談されるのもよいのかなと思った次第です。

都道府県局によっては、問答無用で認定決定ということもあるようなので、、、その点はご承知置き下さい。

労働保険料の申告納付って、税金ほどには浸透していないので、徴収担当部門は苦労しているのかもなあ。

あ、私が労働保険料の申告を単純にミスったという話じゃないので、その点は誤解してほしくないです。。。

ちなみに、認定決定された際の追徴金は労働保険料の10%です。