【厚生労働省】治療と職業生活の両立について
平成28年2月に厚生労働省が「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」を発表しました。
このガイドラインでは、事業者の治療と職業生活の両立支援の意義を、労働者の健康確保のためと位置付けておりますが、それ以外にも次のような意義があると述べています(ガイドラインp2)。
1.人材の確保
2.安心感やモチベーションの向上による人材の定着・生産性の向上
3.健康経営の実現
4.多様な人材の活用による組織や事業の活性化
5.事業者の社会的責任の実現
6.労働者のワーク・ライフ・バランスの実現
また、ガイドラインの巻末には、医師との連絡をするための各種様式が付録として添付されています。
1.主治医に労働者の勤務内容を伝えるための様式
2.治療の状況や就業継続可否の意見を求めるための様式
3.職場復帰可否の意見を求めるための様式
そして、これらの医師の意見を参考にして、治療と勤務の両立計画や、職場復帰計画を作成するための様式も付録として添付されています。
これら付録の様式は、このブログの先頭に貼り付けたリンクに、Word形式のファイルとしてもアップされています。
主治医と職場では、必ずしも目指す目的が一致するとは限らないと思いますが、このような様式を活用して、できるところからコミュニケーションを図っていくことは有意義でしょう。
両者のコミュニケーションが促進されることで、患者(労働者)の利益に資する対策が充実すれば、労使双方にとって今回の施策には意義があったといえるのだと思います。
日本経団連が、「健康経営」に関して会員企業に行った調査結果が公表されています。今年の事業方針に「健康経営」の普及・啓発を挙げているようで、まずは現状を把握したということなのでしょうか。
以下にその概要と、私なりのコメントをしてみたいと思います。
1 健康経営に取り組む目的
調査結果の一番初めに、目的について尋ねた項目がありました。企業イメージの向上といった漠然とした目的よりも、業務効率・生産性向上や経営リスク(安全配慮義務違反、不法行為)の回避のような、直接的な目的を挙げている企業が多いようです。
生産性向上という点で気づいた点は、労働災害においては強度率などの労働災害による労働損失日数という概念があることです。それを私傷病にまで拡張した概念ということもできるのかな、、と感じました。労働者が健康障害で欠勤をすれば、稼働日数が少なくなり、生産性が高まらないという視点です。
2 健康経営の評価指標
高い順に、定期健診の受診率、総労働時間、定期健診の有所見率、労働者の健康状態の改善率となっています。
総労働時間を意識しているのは、1の経営リスクとの兼ね合いもあるのだろうなと思います。長時間労働によって健康障害が発生した場合、企業の責任が問われることが多いからです。
また、健康状態の改善率については、確かに評価指標になると言えますが、行き過ぎると問題が生じるかもしれないと感じました。例えば、肥満であれば昇格させないといったことに、繋がらないとは言い切れないのでは?と感じた次第です。
3 今後との課題
健康経営に取り組むうえでの課題としては、トップに労働者の関心、その後に取組推進体制・人員・予算・情報収集といった項目が続いています。
取組体制を整え、予算と人員を確保して、情報収集をしっかりしたうえで、労働者へ働きかけを行い、関心を高めてもらうということでしょうか。
以上、色々と感想を述べてきましたが、働く人たちが健康であれば、労使ともにメリットがあるという話は確かにその通りだと思います。
それを考えると、お互いが協力して進められるようになれば、一番よいのかなと思いました。
一人一人の健康が確保されることで、そこで働く人たちの幸福が少しでも高まればよいなあと感じだ次第です。