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過労死白書

過労死等防止対策推進法が平成26年に施行され、その第6条に基づいて作成されるのが、過労死白書です。今年度初めての白書が報告されましたので、概要を紹介したいと思います。

過労死等防止対策白書

白書の構成は、第1章 過労死等の現状、第2章 過労死等防止対策の制定、第3章 過労死等の防止のための対策に関する大綱の策定、第4章 過労死等の防止のための対策の実施状況の4つの章から構成されています。
すなわち、1現状、2法制定の経緯・法の概要、3大綱、4対策の実施状況によって記載されております。

1 現状
過労死等の現状(労働時間の状況、脳・心臓疾患や精神疾患の労災補償状況)と、労働・社会の状況(業種ごとの業務特性、生活時間等の労働以外の時間)に節を分けて説明されています。

労働時間については近年減少傾向が見られますが、これはパートタイム労働者の増加によるもので、一般労働者の労働時間は2000時間/年と高止まりのままだと指摘されています。
また、30・40代の労働者に長時間労働が多くみられること、年次有給休暇の取得率は平成12年以降5割を下回る水準で推移している状況が報告されています。
このような状況下で脳・心臓疾患による労災認定件数は、それまで100件前後であったところ、平成14年に300件を超え、その後も300件前後で推移していること、精神障害については平成24年以降は400-500件の間で推移しているとのことです。

業種ごとの労働時間の状況を見ると、平均的な1ヵ月の時間外労働時間が45時間を超えると回答した企業の割合は、運輸・郵便業、宿泊・飲食行、卸売・小売業の順に多いようです。
さらに、時間外労働時間が最も長かった月について、その時間が80時間を超えると回答した企業の割合は、情報通信業、学術研究、専門・技術サービス業、運輸・郵便業の順であったと報告されています。

2 過労死等防止対策推進法の概要
大綱の策定、過労死等防止対策(調査研究、啓発、相談体制整備、民間団体の活動支援の4つ)の実施、協議会の設置、調査研究等を踏まえた法制上の措置を行っていく旨の規定が盛り込まれた法律であることを紹介しています。

3 大綱
大綱には目標が記載されており、早期達成を目指すとしています。目標と達成期限は以下の通りです。

・将来的に過労死ゼロを目指す(期限なし)
・週労働時間60時間以上の雇用者割合を5%以下にする(平成32年まで)
・年次有給休暇取得率を70%以上にする(平成32年まで)
・メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合を80%以上にする(平成29年まで)

4 対策
1調査研究
労災認定事案のケース分析、疫学研究、実験研究、社会調査の4つを実施するようです。
労災認定事案のケース分析のためにデータベースを構築し、そのデータを解析します。
疫学研究は、職域のコホート研究(特定の要因に暴露した群と、統制群の比較を長期間にわたって実施)、職場環境改善に向けた介入研究が予定されています。
実験研究では長時間労働等のリスク要因による循環器負担の影響を調べることにしています。

個人的には、実験研究の研究方法に興味があります。詳細を把握した際は、ブログでも紹介したいと思います。

2啓発
国民に向けた啓発、大学・高等学校における労働条件に関する啓発、キャンペーン期間(11月)中の重点監督等の実施等を実施します。

3相談窓口の整備
労働条件に関する相談窓口の設置(労働条件相談ほっとライン、相談実績3万件)、メンタルヘルス不調・過重労働による健康障害に関する相談窓口の設置(「こころの耳」メール相談実績6500件、「こころほっとライン」開設)、産業保健スタッフへの研修等の実施といった対策を行うとしています。

4民間団体への支援
過労死等防止対策推進シンポジウムの開催等を実施することとしています。

以上が過労死白書の内容です。国の目標として、週労働時間を60時間未満にすること、有給休暇の取得率を70%以上にすることが明記されており、それに沿った国の対応が進むことになると思います。企業としては、そのような経営環境が生じることを念頭に入れておいた方がよいでしょう。