膀胱がんの労災認定について

福井県の工場で膀胱がんを発症した7名が労災保険の請求をした件で、厚生労働省が医学的知見を取りまとめ、それに基づいた請求事案の処理を指示しました。

膀胱がんとオルト-トルイジンのばく露に関する医学的知見を公表します(厚生労働省Webサイト)

それを受けた形で福井の7名については、すでに支給決定が出ているようです。

ぼうこうがん、7人労災認定=福井の工場で化学物質暴露-厚労省(JILPT/時事通信)

厚生労働省が作成した報告書の概要(PDFファイル)では、先行研究のレビューにより、膀胱がんの発症リスクを確認し、そのうえで結論を出して、今後の対応を決定しました。そこで今回は、報告書の要点をまとめました。

1 先行研究の知見
(ア)暴露期間
10年以上の暴露期間があると、有意に発症リスクが高まる。
5年以上10年未満では、有意差はないが発症に関与していると示唆されている。
5年未満では、発症リスクの増加が示唆されている。

したがって、統計上有意なのは、10年以上の暴露期間ということになります。

(イ)潜伏期間
暴露開始から発症までの期間が20年以上で有意に増加するという報告が多い。
10年以上20年未満でも発症したという報告がある。

したがって、統計上有意なのは、20年以上の潜伏期間ということになります。

2 厚生労働省が出した結論
暴露業務に10年以上従事し、潜伏期間が10年以上であれば、業務が相対的に有力な原因となって発症した可能性が高い。

上記以外の場合、作業内容、暴露状況、発症時の年齢、既往症の有無等を勘案して、業務と発症の関連を検討する。

3 今後の対応
福井の事案については、早急に処理するよう指示する。
今後の労災請求事案については、今回の検討会が引き続き業務と膀胱がんの関連を検討する。
オルトートルイジンを取り扱う事業場に対して、労災請求手続きに関して周知する。
オルトートルイジンを特定化学物質に指定する。
経皮吸収によって健康被害の懸念がある化学物質については、保護具の着用と、身体に付着した場合の洗浄を義務付ける。
今後、行政指導を行っていく

なお、オルトートルイジンを使用している事業場は、先の時事通信の報道によると、全国で59か所あるそうです。

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