厚生労働省より「平成26年度個別労働紛争解決制度施行状況」が公表されました

「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」により、全国の労働局では労働相談、助言指導、あっせんといった手続きが実施されており、毎年その施行状況が厚生労働省より公表されています。そして、平成26年の施行状況が6月12日に公表されました。

相談、指導助言、あっせんのいずれについても、「いじめ・嫌がらせ」の件数が最も多くなっているようです。
以前は、解雇が最も件数の多い内容であったと記憶していますが、最近3年間で解雇に関する件数は減ってきているの対し、いじめ・嫌がらせは相談については増加傾向にあり、また、助言指導やあっせんについては減少傾向にあっても、その減少幅は相対的に小さいため、両者の差は開きつつあるのが現状です。

これは私見ですが、解雇については経済状況にある程度依存する一方、いじめ・嫌がらせは職場の風土や雰囲気に依存するために、前者は減少傾向、後者はさほど状況が変わらないか、むしろ増加しているのだと言えるのではないでしょうか。

ところで、いじめ・嫌がらせは、別の言い方をすると、ハラスメントと言えます。ハラスメントが最初に論じられたのは、セクシャル・ハラスメントだったと思いますが、最近ではパワー・ハラスメントやその他のハラスメント概念も登場してきているのは、皆様もよくご承知のことと思います。

セクハラ・パワハラに関する法理として、人格権や職場環境配慮義務が挙げられますが、このことについて最近読んだ文献の内容を引用したいと思います。

その3として、労働者人格権や職場環境配慮義務は、主に労働者サイドの観点から形成されてきたので、仕事の厳しさとか職場の規律という視点がどうしても希薄になりがちであった。とりわけ、出発点がセクハラ事案であったので、職場規律を出すことは上司の権限を温存する機能があったのでそのような傾向はやむを得ないといえる。しかし、パワハラ事案、とりわけ教育・指導ケースについても同様な視点を打ち出すことは適切だろうか。仕事を覚えるためには、適正な、ときには厳しい指導・教育をする要請があるからである。一定の上下関係や強制は不可欠と思われる。(『多様なキャリアを考える(’15) 道幸哲也,原田順子 放送大学教育振興会 (2015)pp131-132』)

セクハラとパワハラの特徴の違いを指摘し、パワハラ概念の難しい点を指摘していると思います。
仕事と全く関係のないことでの相手の人格を否定するような言動は論外としても、パワハラなのか業務指導の一環なのか判断が難しい事例は確かにあるでしょう。

様々な分野の知見を取り入れながら、教育訓練の手法を洗練させていくことと併せて、仕事を覚えてもらうことの本質を意識しながら、教育訓練をしていかなければいけないと感じた次第です。

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