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読書のブログ記事
『なぜ、ビジネス書は間違うのか ハロー効果と言う妄想』

非常に興味深い書籍でした。私が拙い評価をするよりも、本書のごく一部を引用した方が、良さがよく伝わると思います。経営を真面目に学びたい方にぴったりです。是非お手に取ってみてください。

ハロー効果とは、企業の全体的な業績を見て、それをもとにその企業の文化やリーダーシップや価値観などを評価する傾向のことである。一般に企業パフォーマンスを決定づける要因だといわれている多くの事柄は、たんに業績から跡付けた理由にすぎない。(p2)

どうすれば成功するのかという疑問の答えは簡単だ。これさえすれば成功するというものなどない、少なくとも、どんなときにも効果があることなどない(p244)

企業の成功は相対的なものであること、競争で優位に立つには、慎重に計算したうえでリスクを負わなくてはならないことを理解するべきだ。(p244)

企業の成功には運が大きな働きをすることを認めよう。成功した企業は「たんに運がよい」のではないし、好業績は成り行きしだいというわけではないが、それでも成功には幸運がものをいい、ときには明暗を大きく分けるのである。(p245)

おそれずにリスクを負うことも必要であり、それは腰の引けた者にはできない。その勇気を奮い立たせるのが恐怖心である。(p255)

事故調査のための口述聴取法

今年の9月に刊行された書籍です。書名の通り、事故調査の際に口述で情報収集する方法が書かれています。著者は航空自衛隊の自衛官で、航空事故の調査を専門にしています。ただ、著者も指摘しているように航空事故に限らず、事故調査一般に適用できる点も多いようです。

事故調査という目的ですので、責任追及のための情報収集というよりも、真実を究明するために何をすべきかという立場で、説明が展開されています。

私の仕事に引き付けてみると、例えば何らかの事象が生じて、それについて行為者の懲戒処分を行うかどうかの調査となると、どうしても責任追及という目的がついて回ります。その点を考慮しながら読み進めましたが、それでも色々参考になりました。

さらに私の場合は、事故というよりは、事件、何らかのトラブルでの調査をすることの方が多いのですが、そういった調査でも参考にできる部分が多いのではないかと感じた次第です。

特に、ヒトの「記憶」に関して詳細に記述されている点や、「回答の確信度と事実の確かさは関係がない」(p104)という指摘は、説得力があると感じました。文章も読みやすく、2-3時間程度で読み終わりました。

知能指数

知能を客観的にとらえる方法としての知能検査を考案したのは、フランスのA・ビネですが、ビネが目指したものと、その後の知能検査の方法や使われ方には大きいな隔たりがあるようです。

<ビネの知能検査>
・精神遅滞のある子供の就学援助を目的とし、正常児か遅滞児かを判断するだけのツールにすぎない
・知能検査の尺度は、経験的な大雑把なものにすぎない
・知能検査の尺度は、「名義尺度」にすぎず、単に分類をしただけと言ってもよい
・精神遅滞は、適切な援助で改善しうるものである

ビネは精神遅滞のある子供たちに特別な訓練を受けさせるためのツールとして知能検査を考案し、訓練を受けることで子供の状況は改善し得ると考えていました。

<ビネ以降の知能検査>
・知能そのものを捉えたと考え、選抜に利用するようになった
・知能が生得的なものであると言う考え方と結びついた
・特定の集団(例えば人種)と検査結果を結び付けて、偏見・差別の根拠となった
・精神年齢を実年齢で除することにより、IQが誕生し、あたかも比率尺度のような使われ方をした

そもそも、知能検査の質問の内容自体も、文化的な背景に依存しており、また、テストで用いられている言語によっても差が生じるものであるにも関わらず、IQが全人類共通の知能に関する物差しとして扱われてしまった歴史を詳しく論じていました。

講談社現代新書 佐藤達哉(1997) 『知能指数』
アマゾンの紹介ページ

「科学」というと、力強く地平を切り開くようなイメージがあり、科学の進歩によって、人間が自然のことをかなりの部分で理解しているものと思っていました。

ところがこの本は、そんな漠然とした、科学万能主義とでもいうような、科学に対する私の見方をしっかりと否定してくれました。


科学の力で自然のことを沢山理解することができたことは確かだけれども、それは、科学の方法に馴染んだごく一部の領域で成果を挙げたに過ぎないという指摘は、100%文系アタマの私には新鮮でした。


誠実な科学者から語られる、科学の限界についての指摘は、大変興味深いものでした。

そして、科学の方法による検証手法は、私の今の仕事にも大きな示唆を頂けたような気がします。


<読書データ>

著者:中谷宇吉郎

出版社:岩波書店/岩波新書(青版)


確率や統計には全く疎く、一部数式などの理解はできなかったのですが、大変興味深く読み進めることができました。

大数の法則などに代表される統計的処理では、ある特定の集団に起こる特定の出来事について、それが出現する確率を予測でき、その結果リスクを適切に管理することができるとされています。一見すると人間が偶然を支配できるかのように考えることもできます。

しかしながら、大きな数を取り扱う場合の傾向をつかむことはできても、自分がある特定の出来事(良いことも悪いことも)に遭遇しない保証はなく、偶然という現象から逃れることはできないと著者は言います。そして、そのような偶然を逃れる術のない、仕方のないものとして捉えるだけでなく、偶然とは何かを学び、生きていくに当って積極的に偶然というものに向き合うことの重要性が語られています。

例えば、不幸にも悲しい出来事に遭遇した人がいる場合、周囲が慰めることで起こる出来事は避けることができなくても、その人の不幸を少しでも他の人が背負って、苦しみを和らげてあげるといったことができるのではないかと説明しています。

また、破滅的な出来事(例えば原発事故)は、決して起こってはいけないものなので、発生する確率を計算して万が一に備えることには意味がなく、確率の乗法法則と呼ばれる手法で、発生する確率をそれが無視できる程度にまで、限りなくゼロにする必要があると説きます。

確率や統計といったものは、とかく冷徹な領域の学問であるという印象を持っていましたが、この本はそうではなく人間が生きるために必要な考え方を提示してくれたように感じました。とても温かみを感じる不思議な読後感を味わっています。

<読書データ>
著者:竹内 啓
出版社:岩波新書(新赤版)