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2017年6月アーカイブ
 内閣総理大臣が議長となっている働き方実現会議において、今年3月に「働き方改革実行計画」が決定されました。厚生労働省労働政策審議会労働条件分科会で時間外労働の上限規制等について審議が行われ、今回の建議が行われました。産業医・産業保健機能の強化に関する建議と同様、働き方改革実行計画を受けての建議です。



以下の通りその内容をまとめました。

1 時間外労働の上限規制
1)上限規制の原則的枠組み
 ●現行の時間外限度基準告示の法律への格上げし、罰則による強制力を持たせること、
 ●従来は上限なく時間外労働が可能であった臨時的な特別の事情がある場合であっても上回ることのできない上限を設けること
 以上の2つの対応について適当であるとされました。そのうえで、次のように述べられています。
 
 ●時間外労働の上限規制は、現行の限度基準告示と同じ、月45時間、年間360時間とする(3ヵ月を超える期間を対象期間とする1年単位の変形労働時間制においては、月42時間、年間320時間)。上限規制の違反は、次の特例に該当する場合を除き罰則を科すことが適当であるとされました。
 ●特例として、臨時的な特別の事情がある場合、労使協定を締結する場合でも超えてはいけない時間外労働時間を年間720時間とすることが適当であるとされました。さらに年720時間以内において、最低限上回ることのできない上限として、
 ア)休日労働を含み、2ヵ月ないし6ヵ月平均で80時間以内
 イ)休日労働を含み、単月で100時間未満
 ウ)原則である月45時間(一年単位の変形制の場合は42時間)を上回る回数は、年6回まで
 とすることが適当であるとされました。
 なお、原則である月45時間の上限規制には休日労働時間を含まないこととされているため、アとイについては、特例を活用しない月(=月45時間以内の月)においても適用される点には注意が必要です。
 ●現行の36協定は、「1日」と「1日を超える一定の期間」についての延長時間が必要的記載事項とされ、「1日を超える一定の期間」については、時間外限度基準告示で「1日を超え3ヵ月以内の期間及び1年間」とされている。今後は、月45時間、年360時間が法定化されることから、「1日を超える一定の期間」は、「1月」と「1年」に限るものとすることが適当であるとされました。また、1年間の上限を適用する起算点を明確化することも適当であるとされています。

2)現行の適用除外等の取扱い
 現行の時間外限度基準告示では、1)自動車の運転の業務、2)工作物の建設等の事業、
3)新技術、新商品等の研究開発の業務、4)季節的要因等により事業活動若しくは業務
量の変動が著しい事業若しくは業務又は公益上の必要により集中的な作業が必要とさ
れる業務として厚生労働省労働基準局長が指定するもの、以上の4つが適用除外とされています。

ア)自動車の運転業務
 罰則付きの時間外労働規制の適用除外とせず、改正法の一般則の施行期日の5年後に年960時間以内の規制を適用することとし、かつ、将来的には一般則の適用を目指す旨の規定を設けることが適当であるとされました。また、この場合においても原則である月45時間、年360時間に近づける努力が重要とされました。

イ)建設事業
 罰則付きの時間外労働の適用除外とせず、改正法の一般則の施行期日の5年後に一般則を適用することが適当であるとされました。ただし、復旧・復興の場合は単月で100 時間未満、2か月ないし6か月の平均で80 時間以内の条件は適用しないが、併せて、将来的には一般則の適用を目指す旨の規定を設けることが適当であるとされました。また、この場合でも原則である月45時間、年360時間に近づける努力が重要とされました。

ウ)新技術、新商品等の研究開発の業務
 業務の特殊性があるため、現行制度で対象となっている範囲を超えた職種に拡大することのないよう、その対象を明確化した上で適用除外とすることが適当であるとされました。
 その際、健康確保措置として、時間外労働時間が月100時間を超えた者に対し、医師の面接指導の実施を労働安全衛生法上義務付けることが適当とされ、義務違反への罰則の適用や面接指導後の事後措置の実施の義務付け、当該事後措置に代替休暇の付与を位置付けることも適当であるとされました。

エ)厚生労働省労働基準局長が指定する業務
 季節的要因等により事業活動若しくは業務量の変動が著しい事業若しくは業務又は公益上の必要により集中的な作業が必要とされる業務として厚生労働省労働基局長が指定するものについては、原則として罰則付き上限規制の一般則を適用することが適当であるが、業務の特殊性から直ちに適用することが難しいものについては、その猶予について更に検討することが適当であるとされました。

オ)医師
 医師法の応召義務等の特殊性を考慮し、改正法の施行期日の5年後を目途に規制を適用することが適当であるとされました。医療界の参加の下で検討の場を設け、規制の具体的なあり方等を検討し、結論を得ることが適当とされました。

3)労働基準法に基づく新たな指針
●可能な限り労働時間を短くするため、新たに労働基準法に指針を定める規定を設け、行政機関が助言・指導を行えるようにすることが適当であるとされました。
●指針には、特例による労働時間の延長をできる限り短くするよう努めなければならない旨、および休日労働も可能な限り抑制するよう努めなければならない旨を定めることが適当であるとされました。
●36協定の必要的記載事項として、原則の上限時間を超えて労働した労働者に講じる健康確保措置を定めなければならないことを省令に位置づけ、措置として望ましい内容を指針で定めることが望ましいとされました。その内容は、企画業務型裁量労働制対象者に講ずる健康確保措置として労働基準法第38 条の4の規定に基づく指針に列挙された内容(代償休日又は特別な休暇の付与、健康診断の実施、連続した年次有給休暇の取得促進、心とからだの相談窓口の設置、配置転換、産業医の助言指導に基づく保健指導)を基本として、長時間労働を行った場合の面接指導、深夜業の回数の制限、勤務間インターバル等を追加することが適当であるとされました。
●現行の限度基準告示に記載されている、限度時間を超える時間外割増率を法定の割増率を超えるよう努めなければならない旨の規定、労働時間を延長する必要のある業務区分を細分化する旨の規定についても、新しい指針に規定することが適当であるとされました。

2 勤務間インターバルについて
労働時間等設定改善法第2条(事業主等の責務)を改正し、事業主は、前日
の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保に努めなければならない旨の
努力義務を課すとともに、その周知徹底を図ることが適当であるとされました。そのうえで、同法に基づく指針にも、「労使で導入に向けた具体的な方策を検討すること」を記載することが適当であるとされました。

3 長時間労働に対する健康確保措置
●現行では、1週間当たり40時間を超えて労働させた場合、その超えた時間が1か月当たり100時間を超えた者から申出があった場合に義務となっている医師の面接指導について、100時間を80時間に改める省令改正を行うことが適当であるとされました。
●管理監督者を含むすべての労働者を対象として、労働時間を把握しなければならない旨を省令に規定することが適当であるとされました。労働時間把握の方法は、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を参考に、通達において明確化することが適当であるとされました。

4 その他
 法改正までに十分な準備期間を設けることが必要であるとされています。
 また、上限規制の履行確保については、以下の2点について措置することが適当であるとされています。
1)過半数代表者
 選任方法について、使用者の意向による選出は手続き違反である旨の通達の内容を労基法施行規則に規定することが適当であるとされました。また過半数代表者が円滑に業務を遂行できるよう使用者が配慮する義務があること、使用者に36協定を労働者に周知させなければならない法の規定を踏まえ対応を徹底を図ることが適当であるとされました。
2)労働基準監督機関の体制整備
 上限規制導入の前提として、36協定の締結・届出を行うことなく時間外・休日労働をさせている使用者の監督指導の徹底が強く求められていることため、企業単位の監督指導の強化、地方運輸機関等との連携強化、労働基準監督官の定員確保などを行うことが適当であるとされました。
3)電子申請の促進
 36協定の届出について、簡素化・効率化を進めるために、電子申請の利便性向上を図ることが適当であるとされました。具体的には、使用者の電子署名が必ず必要となっている現行の取り扱いを改め、社会保険労務士の電子署名による代理申請に際しては、事業主の電子署名については委任状の添付等により省略できることについて、省令の改正を行う方向で検討を継続することが適当であるとされました。
 
以上が建議の内容です。建議にもあるとおり、改正法の施行までに十分な時間を与えられるようですが、今からでもできることは、早期に検討する方がよいように思います。
 内閣総理大臣が議長となっている「働き方実現会議」において、今年3月に「働き方改革実行計画」が決定されました。それを受けて、厚生労働省労働政策審議会安全衛生分科会で産業医・産業保健機能の強化を図るための審議が行われ、今回の建議が行われました。

 このブログではこの建議の内容をまとめてみたいと思います。




1 事業者における労働者の健康確保対策の強化
1)労働者に対する就業上の措置について
 健康診断結果、長時間労働者への面接指導、ストレスチェックの後の面接指導において就業上の措置について産業医から意見を聴取した後、実際に行った措置の内容、または措置を行わなかった場合の理由を産業医へ情報提供することが適当であるとされました。
 また、産業医は労働者の健康確保のために勧告できる(安全衛生法第13条第3項)とされていますが、その際に事前に事業者から意見を求めるとともに、事業者は勧告された内容を衛生委員会に報告することが適当であるとしています。
 
2)健康情報の事業場内での取扱ルールの明確化・適正化の推進
 事業者は医師等による面接指導や健康診断結果から必要な情報を取得して、労働者の健康と安全を確保する必要がある。一方、労働者が雇用管理で不利益取り扱いにつながる不安を抱かずに産業医等による健康相談等を受けられるようにする必要性が指摘されました。
 そのため、雇用管理に必要とされる健康情報について衛生委員会で審議し、労使双方の関与によって決定することが適当であるとされました。また、国においても指針を作成・公表することが適当であるとされました。

3)労働者が産業医・産業保健スタッフに直接健康相談ができる環境整備等
 労働者が直接産業医等に健康相談できる体制を事業者が整えるよう努めることとすることが適当であるとされました。

2 産業医がより一層効果的な活動を行いやすい環境の整備
1)産業医の独立性、中立性を強化するための方策
 ア)産業医が産業医学の専門的立場から、独立性をもって職務を行うことができるよう、産業医は産業医学に関する知識に基づいて誠実にその職務を行わなければならないことを法令に明示すること、イ)産業医は自らの知識・能力の維持向上に努めること、ウ)産業医が離任した場合に事業者がその旨と理由を衛生委員会に報告することが適当であるとされました。

2)産業医がより効果的に活動するために必要な情報が提供される仕組みの整備
 一か月あたり時間外労働時間が80時間を超えた者の氏名・時間外労働時間、労働者の健康管理のために必要な担当業務に関する情報等の労働者の健康管理に必要な情報を事業者が提供することが適当であるとされました。
 これに関して、6月の安全衛生規則の改正で、時間外労働時間100時間を超える者の氏名・時間外労働時間を産業医に情報提供することとされましたが、今回の建議ではそれをさらに80時間に拡大しようというものであると考えられます。

3)産業医が衛生委員会に積極的に提案できることその他産業医の権限の明確化
 ア)衛生委員会において労働者の健康管理に必要な調査審議を求めること、イ)労働者からの情報収集・事業者や作業主任者に対する意見・危機的緊急事態での現場で作業する労働者の指示等、産業医の権限について、より具体化・明確化することが適当であるとされました。

3 その他
 1、2で述べられた措置について、履行確保を図るため、書類の保存義務を課すことが適当であるとされました。
 解雇・退職に関する紛争の予見可能性を高める観点から、厚生労働省内の検討会で議論が続けられ、今回報告書の形でまとめられました。



 この報告書は、産業競争力会議や規制改革会議における議論が「日本再興戦略」改訂2015(平成27年6 月30日閣議決定)及び規制改革実施計画(平成27年6月30日閣議決定)としてとりまとめらたのを受け、厚生労働省の検討会で2年間の議論の末にまとめられました。
 今後、さらに「透明かつ公正な労働紛争解決システム」について、厚生労働省の労働政策審議会で審議される予定です。

 このブログでは、報告書の概要を以下の通りまとめました。少し長くなりましたが、それでも書ききれない論点も多々あります。不十分な点もあると思いますが、よろしければお読みください。

1 現行システムの現状の評価と改善の方向性
1)現状
ア 労働局の相談、助言・指導、あっせんは、裁判に比べて簡易・迅速な処理が行われ、無料であることから紛争処理の最大の受け皿である一方、被あっせん者の参加率が6割にとどまり、内容も両者の主張の幅寄せを試みるという現状であり、改善が求められる。

イ 地方自治体(労政主管部局、労働委員会)においては、労働局の対応と比べて時間をかけて丁寧な処理をしている。一方、認知度が低いため取扱件数が少ないという課題がある。

ウ 司法による個別労働紛争の解決システムとして、労働審判制度が挙げられるが、着実に利用が進んでおり、ほぼすべての事案が6ヵ月で終了している。一方、解決金のデータが公表されておらず、予見可能性が低いという課題がある。

2)改善の方向性
ア 労働局のあっせんについては、あっせん参加の任意性を見直すこと、一定程度の事実認定をしてうえで主体的に解決案を示す仕組みを検討することが考えられるが、あっせんの利点である迅速な手続きを妨げる副作用が懸念される。
 また、あっせんは2ヵ月以内にほとんどの事案が処理されている。処理期間を公表することで、時間的予見可能性を高める工夫が必要である。解決金額についても同様に公表することで、金銭的予見可能性を高める必要がある。

イ 労働審判制度についても、時間的・金銭的予見可能性を高めるために、処理期間や解決金額を公表することが重要である。

2 解雇無効時における金銭救済制度について
1)あり方
●労働者申立制度と、使用者申立制度の二つが考えられる。
●職場復帰を希望する者は従前通り、希望しない者に新たな仕組みをという考え方になるのではないか。ただし、不当解雇に対する救済の基本は解雇無効による地位確認であるべきではないか。
●労働者申立制度については、ア)解雇無効判決を要件とする金銭救済の仕組み、イ)解雇を不法行為とする損害賠償請求の裁判例の存在を踏まえた金銭救済の仕組み、ウ)実体法に新たに金銭支払いを請求できる権利を設ける金銭救済の仕組みの3つが検討された。
●ア)の類型で処理する場合、金銭の支払いを命じる「給付判決」と労働契約終了という法律関係の変動を宣言する「形成判決」を同時に得る手法が考えられるが、形成原因については、未だ金銭給付がない以上、要件が満たされておらず、形成の判決がなし得ないことが問題として挙げられる。
●イ)は裁判例が少なくリーディングケースもない。そもそも損害賠償することで労働契約が終了するという効果が生じるということが、論理的に説明が難しいため、この方法を採用することは困難とされた。
●ウ)はわかりやすいが、今後、権利の法的性格や権利の要件・効果等の法技術的にさらに検討すべき課題が多いと指摘された。
●使用者申立制度については、不当な解雇や退職勧奨など、使用者のモラルハザードを招く恐れがあり非常に問題が大きいという意見や、導入する場合でも労使の信頼関係が破壊されているという非常に限定的な場合に限るべきという意見があった。
2)必要性
●現行の制度については、閣議決定された「日本再興戦略」改定2015において、紛争解決までの期間やどれくらいの金銭が必要かといったことが明らかでなく、一旦職場復帰した後に短期間で退職することがあることから個人の能力発揮や人材活用の観点から問題が大きいと指摘されている。
●そのうえで検討会で必要性を議論したところ、労働者の選択肢を増やすメリットが指摘される一方で、現行の労働審判制度で調停や和解で解決している現状に悪影響を及ぼす可能性がある、企業のリストラ手段として利用されかねない、解決されていない法技術的論点が多いといった問題点が挙げられた。

3その他の制度について
1)解雇予告期間のあり方
労働者保護の観点から勤続期間に応じて期間の延長が考えられる、解雇予告期間と民法上の解約期間(民法627条だと思われます)との関係を考慮すべき等の意見があった。

2)紛争当事者の負担軽減のありかた
労働者の負担軽減策として、労働組合の支援や民間の保険の活用を検討すべきという意見があった。

3)その他
紛争の未然防止の観点から労働者、使用者双方に対して、労働関係法令への理解が深まるよう周知を行うことが適当であるという意見があった。
 以上が私なりにまとめた概要です。解雇の金銭解決制度については、賛否が分かれており、反対する立場からは労政審での議論自体不要という意見も出ているようです。引き続き、議論の行方を見守っていきたいと思います。